ひびつれづれ

無な人間の日々のあれやこれや

発達障害の検査を受けた話

実は先日、発達障害の検査を受けてきた。
そのときの事や結果などを、備忘録としてここに少し書いておく。

きっかけ

大人の発達障害という概念が世間に知られるようになり、私も、自分が発達障害なのではないかと思うようになった。と、言うのも、昔から人付き合いが苦手で、自分の殻に閉じこもりがちなところがあったからだ。人の顔や名前を覚えるのも苦手で、とにかく周りから浮いているような気がいつもしていた。
それに加えて、一昨年、会社の中で仕事のチームが変わり、これまでと違う仕事をするようになったけれど思うように上手くこなせず、自分は能力が低いのではないかと感じるようになっていた。チームの先輩と仕事の事でやや空気が悪くなることもあり、気持ちが落ち込むことも多かった。

そういうこともあり、発達障害の人向けの仕事本を読んだりして、とにかく仕事をなんとかせねばとしているときに、カレー沢薫先生の、「なおりはしないが、ましになる」というコミックエッセイを読んだ。

 

 カレー沢先生が、片付けられない、気分にムラがあるなどの性質のせいで、生活に支障が出てしまっていること、そこから発達障害の診断を受けて、治療や生活上の工夫をすることなどを、自らの体験を元に、面白可笑しく軽い気持ちで読めるように書かれている。
カレー沢先生自身は、ADHDと軽度の自閉症疑いという診断が下るわけだが、本書を読んでいて、私は自分が自閉症スペクトラムっぽいなと思った。

この本を読んで、とにかく自分の特性を知ること、知って何らかしらの工夫をすることが大切なのではと思い、まずは発達障害の検査を受けてみようと思った。

検査

検査を受けてみたいと思った私は、とりあえず精神科・心療内科の先生に相談してみた。
本来、発達障害の検査というのは育成歴を調べたり(子供の頃の通知表とか見るらしい)、現在の生活でどのような事に困っているのか等を色々ヒアリングしたり、多種多様な検査をしたりして医師が総合的に判断するらしい。前述のカレー沢先生の本でも、そのような記述があった。
私もそういうのできるのかな?と思っていたのだが、私に提案されたのはWAIS-Ⅳ(ウェイス・フォー)という検査だった。先生の説明によると、自身の得意不得意の特性をみる検査だそう。後で調べてわかったのだが、これは成人向けのいわゆる知能検査で、IQがわかるものだ。
思っていたのとはちょっと違う検査を受けることになったのだが、とりあえず言われたままに受けてみることにした。なお、検査費用が約9000円、結果のフィードバックが約3000円くらいだった。

検査内容としては、9つの色のついた積み木を渡されて、提示された模様になるように並べ変えたり、言われた数字を足し算して回答したり、言われた数字を逆の順番で答えたり、長めの文章で算数の問題を言われ(問題用紙などはない)それに回答したり、挙げられたふたつの言葉の共通点を考えたり、提示された言葉の意味を自分なりに答えたり、提示された記号と同じものをいくつかの記号の中からひたすら選んだり、提示された図形を回転させた形を選んだり、図の欠けている部分を答えたり…他にも色々あったと思うが、こういった問題を解き続けた。検査時間はだいたい2時間位だ。疲れたら途中で休憩もできたらしいが、私の場合はやっていたらいつの間にか2時間経っていたという感じだった。
個人的な印象としては、図形が出てくる問題はちょっと苦手で、言葉関係の問題は割となんとかなったし、やってて面白いなという感じだった。

結果

2週間程で結果が出たので、結果を聞きに再び病院へ向かった。
ここで結果のフィードバックを受けるわけだが、検査結果用紙みたいな物は貰えないらしく、自分でメモを取るのはOKということだった。

受けた検査の内容が大きく4項目に分けられ、それぞれ数値が出ていた。それを総合的に評価して全体的なIQが出されるらしい。
具体的な数値は控えるとして、私の結果は概ね以下のようなものだった。

FSIQ(全検査IQ)

全体的なIQを示す数値。
これに関しては、私はザ・平均という感じの数値だった。高くもなく低くもなく。超凡人である。面白味もない数値だったのだが、何せ自分がものすごく無能なのではないかと不安を抱えていたくらいなので、まあ平均と言われてちょっと安心というところはある。

VCI(言語理解)

言語の理解力や思考力を示す数値。
言葉を説明したり、共通点を探す検査は多分ここに反映されてるっぽい。
私はここの数値が一番良かった。平均よりも上らしい。
特に語彙力が高く、単語を説明する力が強いと言われた。
この数値が高い人は、言語を使ってコミュニケーションをするのが得意だそうだ。…あれ?私はコミュニケーション苦手だが。聞いてみると、苦手な原因は言語的な所が原因なのではないのではないかとのこと。

PRI(視覚推理)

目で見た情報を把握したり、それに合わせて体を動かす力を示す数値。
積み木や、図の欠けた部分を推理する問題などがここに反映されているらしい。

自分的にはこういうのは苦手だと思っていたのだけれど、結果はここは平均的な数値。思っているほど不得意ではないようだ。

WMI(ワーキングメモリー

情報を記憶して使う力を示す数値。
パソコンのメモリーみたいなもんなのかな。
算数の問題文を聞いて答えたり、逆から数字を答えていく検査などがここに反映されている。

ここの数値は平均の中ではちょっと下の方。確かに検査のときにも難しいと感じていた。
ここの力が低いと、会話の話題の流れで主題を忘れて話が脱線してしまったり、話の聞き漏れや聞き逃しが多かったりするらしい。あと、マルチタスクが得意かにも関わる数値だとか。確かにマルチタスクは苦手だ。
特に私は、耳から得た情報を残しておくのが苦手なように思えたとのこと。そうなのか…。

改善策も出して貰えて、例えば、仕事上で何か指示を貰うとき、口頭だけではなく目で見る情報を出してもらう、メールやLINEに残すようにするとか、メモツールを活用する、静かな場所で話してもらう等、工夫をしてはどうかと教えてもらった。

PSI(処理速度)

目で見た情報を処理するスピードに関する力を示す数値。
同じ記号を探してひらすら問題解いていく問題とかがここに当てはまる。

ここの数値が一番低かった。辛うじて平均の範囲内には入っているが…という感じ。
心理士の先生曰く、「全部確認しながら回答しているのが印象的だった」とのこと。何を隠そう強迫性障害持ちなので、その辺は基本動作ですという気持ちだった。

そのお陰もあってか、回答のスピードは遅いが、この項目に関する検査の回答にミスがひとつもなかったとのこと。こういうのもひとつの特性と言えるかもしれない。

ここの数値が低いと、他の人と同じペースで作業ができない、無理して急いでケアレスミスをする、という事が起こるそう。

対策としては、確認する動作を減らして省エネする、手順を固定化する、等を提案してもらった。

結局発達障害なのかどうか

実は、この結果をフィードバックしてもらった日は、メモを取るのでいっぱいいっぱいだったので、検査を受けた目的をすっかり忘れて帰宅してしまった。
後日、改めて病院へ行って聞いてみた。「結局、私は発達障害の傾向ありそうですか?」と。
結論から言うと、今回の検査の結果の限りでは、発達障害であるとは言えないだろうとの回答だった。発達障害のある人は、もっと検査の各項目の成績がばらけるんだそう。

先にも書いたが、本来発達障害の検査というのは、多くの診察や検査を行った上で診断されるもののようなので、私が受けたWAIS-Ⅳだけで結果を出していいものなのかどうか、専門知識がない私では判断できないのだが、医者がそう言うのならまあいいだろうと思うことにした。

 

検査を受けてみて

今回、色々思うところがあり検査を受けてみた訳だが、結果的には「受けてみて良かった」と思っている。
自分が能力的に劣っているのではないか、という不安がある程度拭えたということももあるし、自分の得意不得意がつかめたことも大きい。例えば、「耳から得た情報を処理するのが苦手」だとは思ったこともなかったのだ。その辺に気を付けて、日常で工夫しながら過ごすことで、ちょっと生きやすくなるかもしれない、と言ったら大げさだが、何らか良い方向には向かうかもしれないという安心材料になったからだ。

検査とフィードバック合わせて1万円を超えてしまうので、気軽に受けられるものでもないが、私と同様の悩みを持っている人がいたら、心療内科に相談してみるのもひとつの方法かもしれない。

この話が誰かの参考になれば幸いである。